日本財団 図書館


 

4−1.ガイアポリス構想の構図
生活者のネットワーク化
見える都市 見えない都市
まちは大きな家 家は小さなまち
今からは生活者重視の時代である。生活者の日常及び非日常的行動の規範が基本的に大きく変化してきている。とくに文明の発展は19世紀から20世紀末に至る間に、人類史上稀にみる急速発展をした。特記すべきは人間が地球外空間へ初めて出たこと等、数多くの利便性を中心に役立っている。
しかし、他方では地球という有限資源と、あらゆる生物との共存が、地球環境問題として認識され、地球的規模での保全策と対応が強く求められている。
このようにグローバルな視点の重視と、同様に生活者の立場からの住みよい地域づくりを如何に考えていくか、これが現代から未来に生きる人間に与えられた大きな課題でもある。
生活者のネットワーク化の進展は都市空間の構造をも変える空間的な都市化はあまり進展しなくとも、生活様式は確実に都市化してきている。
さらに地域差はあるものの、交通網の整備やマイカーの普及に伴うモビリティの向上は、宅地の増加、建築物の高度化という「見える都市化」ではなく、「見えない都市化」が着実に進行している。時に「家族のネットワーク化」も生まれつつある。
このように生活を取り巻く社会的状況は、今、大きく転換期を迎えている。その最も注目すべきは、従来、家庭内にあった機能(家事、儀式空間、勉強部屋等)が家庭外に出て、逆に都市にあった機能(趣味、娯楽、映画館等)が家庭内に侵入してきている。
この家庭内機能の外部化(都市化)と都市機能の家庭内化とが、あまり矛盾を感じないまま同時に進行しているのが、また、現代社会の特徴の一つと云えよう。
この背景は、生活価値観の変化と生活者のネットワーク化があり、都市機能と住宅機能との垣根をも不明確にしつつある。
今ほど「まちは大きな家、家は小さなまち」という実感が理解できる時代になってきている。従来の閉鎖的な一元的価値観に基づく生活観ではなく、それぞれの生活者によって都市・地域との関わり方が異なるような「広域的地域連係型有機的都市(ガイアポリス)観」の確立を目指さなければならない時代である。
「ガイアポリス構想」のコンセプト・キーワードは『場』と『道』
大阪湾という『場』と世界の海への「道』の起点として、交易を通して文化・文明・情報・各地域の自然と文物等に至るまでの地球的に広げていく“かけ橋”としてのネットワークの役割を広い概念でとらえたい。
1995年1月17日「阪神・淡路大震災」が起こり、予想しなかった大災害となった。とくに被害状況の把握体制の不備と情報伝達の遅れについて問題となった。この経験は都市防災計画のあり方について、多くの教訓を残した。この都市防災問題については古くて新しい課題として、今までにも関係研究者、技術者、プランナーが多くの研究成果と計画は考えられてきたが、不幸にも阪神地域では地震予想も含めて「防災都市づくり」の認識がうすかったように思う。同時に残念ながら地震は必ずやってくる。そのためには地震とうまく共存していくしか地震列島に生きる私達には道はない。そのために、地震を侮らず「地震と共存する社会システムのある防災都市連合(ガイアポリス構想)」づくりが必要であり、最適の地震対策と考えている。
内容的には多くの対策があると思うが、まず、住民との関係をもっと緊密なものとする防災都市とは、日頃の防災訓練と自衛防災が大事であることも、「阪神・淡路大震災」は教えている。
そのためには“住民合意が得られる「ガイアポリス構想」”であることと広域的地域連係型として、各行政の協力的計画で“広域基幹的社会資本整備”が、絶対必要条件となる。
4−2.ガイアポリス構想の広域基幹的社会資本整備
<物流>マリン・ステーション・システムの整備(海中複合一貫輸送システム)
<交流>ヒューマン・コミュニティ・ロード(大阪湾周遊歩道十三次計画)
<交通>大阪湾岸高速道路地
<防災>防災救助船団方式の大阪湾防災都市拠点づくり
5.おわリに
母なる海「大阪湾」は過去にハートのあるソフト・ハードの経験の蓄積と、今後の「阪神・淡路大震災」の尊い教訓を生かし、恵まれた大阪周辺の知勢(文化・学術・産業等)を来る21世紀の全生物との共生のために貢献できる可能性を充分に備えているそのために「ガイアポリス構想」の提案を行う。
<参考文献>
?都市と建築/川添登/日本放送出版協会/1967年
?都市の生態学/沼田真/岩波書店/1987年
?すばるプラン/新近畿創生推進委員会/1987年
?ベイ・フロンティア・オオサカ構想/大阪科学技術センター/1990年

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION